CONDITIONING MAGAZINE

洞ノ上浩太 vol.1 夢や目標は大きくなくていい

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【vol.1】 夢や目標は大きくなくていい。

スポーツ競技としての魅力が高まり、近年は大きな注目を集めている車いす陸上。なかでも腕のチカラだけで42.195kmを疾駆する車いすマラソンはダイナミックなレース展開が見られることで人気を博す。今回は、車いすマラソンのトップアスリート・洞ノ上浩太選手にお話を伺った。

車いすマラソンのスピードと駆け引きを楽しんでほしい。

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――まず、洞ノ上さんが戦っている車いすマラソンについて教えてください。

「通常のマラソンと同じ距離42.195kmを車いすを使って走る陸上競技です。車いすは『レーサー』と呼ばれる陸上競技用のもので、前輪1つと後輪2つの大きな三輪車。車輪の外側についたハンドリムというリング状のものを手で回して走り、タイムを競います。」

――この競技の魅力は何でしょう?

「まずはスピードですね。平均速度30kmくらいで走りますから、迫力があります。あとは駆け引きも重要なポイント。速度が出るので前の選手と後ろの選手では受ける空気抵抗に大きな差があって、前の選手の空気抵抗が100%だとすると、後ろについた選手は70%くらいに下がります。だから、レースではトップを走る選手の後ろに他の選手たちが風をよけるために入り、一列になって走るのですが、ペースが落ちてくると列を保てなくなり丸い集団になる。でも、また誰かが仕掛けて前に出ると再び一列に戻る、という集団ごとのローテーションをレース中に繰り返すので駆け引きは勝敗に大きく影響するんです。こういうところからも車いすマラソンは、自転車レースに似ていると言われています。最近はテレビ中継されることもあるので、"ここでこの選手が仕掛けたからレースが動いたんだな"など駆け引きにも注目してもらいたいですね。」

――洞ノ上さんはブログでもレース状況を細かく書いていらっしゃいますね。

「応援してもらっている方に、できるだけ臨場感を持ってレース内容を報告したいと思い書いています。文章で結果だけを知らせても面白くないでしょうし、感情移入もしにくい。どのようなコースをどう走って、ここでキツくなって、結果としてこういう順位だった、というストーリーで伝えるようにしています。」

――なるほど。そうやって報告されるとレースがリアルに感じられます。

「それに、自分で読み返せるのもいいんですよ。人の記憶って意外と曖昧で、鮮明に覚えておくことはむずかしい。でも、書いて残しておけば読み返せます。例えば、何回も参加している大会に出る場合は、前に出場した時にどうだったかを読み返して準備できます。過去を振り返ることも、新しいレースに向かうためのコンディショニングのひとつなんです。」

目の前の目標をクリアして、積み重ねていく。

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――洞ノ上さんが車いすマラソンを始めたきっかけは?

「バイク事故で入院していた時に、同じように脊髄を損傷して車いす生活になった男性と仲良くなりした。退院後はお互いの地元に戻ったのですが、あるとき『車いすマラソンを観に来てください』と誘われて山口の大会に出向いたら、彼がハーフマラソンで優勝したんです。車いすマラソンを始めて半年くらいなのに、ぶっちぎりで勝った。かっこよかったですね。」

――初めて観た車いすマラソンに衝撃を受けた?

「競技場で待っていたら、ものすごい勢いで車いすに乗った選手が戻ってきました。バイクが入ってきたのかと勘違いするくらい速くて驚きましたね。想像していた車いすのスポーツとまったく違っていて、すぐに『自分もやりたい!』と思いました。」

――実際に競技を始めてみていかがでしたか?

「当初はまっすぐに走れませんでしたし、何回も転びました。競技用の車いすは三輪のうえに前輪が軽いので、重心を後ろに移したらすぐ後ろに倒れる。慣れるまでは恐かったですね。」

――そこから日本代表に選ばれるまでになる。すごいですね!

「最初から大きな目標を持ってトライしたわけではありません。まずは競技用の車いすに乗る、次はレースに出る、といった目の前のことをひとつずつクリアしただけなんです。ぼくは、最初に掲げる夢や目標は大きくなくていいと思っています。大きい・小さいではなく、"目の前の目標"を持って達成していく。それを積み重ねていけば、結果として大きな夢が得られます。事故で足が動かなくなった時はショックを受けましたし、大きく落ち込みました。でも、リハビリをして、車いすマラソンに出会って、今では世界の大会に出場しています。事故に遭うまで何もスポーツをしてこなかったぼくが、日本を代表して戦っている。自分でも面白い人生を歩んでいるなって思っているんですよ!」

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着用アウター

DWO097 GY

文/浦山まさみ

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【PROFILE】


洞ノ上 浩太 HOKINOUE KOUTA

1974年、福岡県生まれ。

バイク事故による脊髄損傷で25歳から車いす生活に。車いすマラソンと出会い、2002年大分国際車いすマラソン大会ハーフの部でデビュー。

2006年極東・南太平洋障害者スポーツ大会のフルマラソンで金メダルを獲得し、2011年には車いす陸上フルマラソンの日本記録を樹立する。

パラリンピックには、2008年北京、2013年ロンドン、2016年リオに出場し、入賞を果たしている。


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