CONDITIONING MAGAZINE

竹内洋岳 vol.1 登山は死ぬイメージをいかにできるか

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【vol.1】 登山は死ぬイメージをいかにできるか。

日本人初の"8000メートル峰全14座完全登頂"という偉業を成し遂げ、45歳を超えてもなお未踏峰へのあくなき挑戦を続ける日本登山界の至宝、竹内洋岳。Vol.1では登山シーズン外での活動、登山に向けての準備、そして彼が思う登山の魅力について話を聞いた。

釣りはヒマラヤにおいての行動パターンと似ている。

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――現在の活動を教えてください。

「登山がメインの活動になるんですけど、日本では現在(9月)はあまり山登りをしません。主な活動はネパール、チベット、パキスタンのヒマラヤ山脈なので、登山シーズンは4~5月、9~10月になります。(シーズン前は)国内においてはカラダを休める時間だと捉えているので、山歩きには行きますけど厳しい登山はあまりしておらず、活動のほとんどが釣りになっています。トップウォーターバスフィッシングというスタイルの釣りで、釣りと言うとゆったりしたイメージがありますが、私の釣りはカヌーで長い時は1日に14~15時間移動しながら釣りをするかなりハードな釣りです。釣りをしながらだったら、カヌーで地球一周できるんじゃないかっていうくらい(笑)。私はカラダを動かすことができるがゆえに、移動範囲の広い釣りになってしまっていますね。」

――釣りが登山のためのコンディショニングにも繋がっているのでしょうか?

「あえてそのための目的としてやっているわけではありませんけど、結果的に長時間野外で動きつづけている。十数時間動きつづけるのは、確かに登山の練習になっているんじゃないかなと思います。飲まず食わずで十数時間動き続けるので、それはヒマラヤにおいての行動パターンとほぼ同じなんです。」

想定外をいかに超えていけるかどうかが山登りの面白さ。

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――登山シーズン外での具体的な準備は何ですか?

「登山を思い描いて想像することです。そう言うとポエムのようですけど(笑)、次の登山はどこに行こうか、誰と行こうか、どうやって登ろうか、道具は何が必要なのか、想像によって計画が具体化していくわけですね。どこに筋肉をつけようかとか、どこの筋肉を落とそうか、体重をどうしようかというところまで具体化していきます。そうすることで、私自身のカラダが目覚めていくんです。

 過去に14座(標高8000メートルを超える14の山の総称)を登り続けて、ひとつ登頂し終えて日本に帰ってくると、私の主治医をしてくださっていた先生が血液検査をしてくれるんですね。人間のカラダは低酸素に曝露されると、酸素の運搬量を増やすために自己防衛としてヘモグロビン量を増やすんです。ですから帰国後に血液検査をすると、ヘモグロビン量が脳血栓を起こすかもしれない危険なレベルにまで達している。ヘモグロビン量は本来、低酸素に晒されないと増えない。ところが私の場合は、次の登山の計画を立てて準備を始めると、まだ山に行っていないのにその数値が上がり始めるんです。出発の頃には、マラソン選手が高地トレーニングをしたのと同じくらいの数値まで上がります。

 医学的には説明できないけど、低酸素の中で自分を生き延びさせようとする経験をしていると、準備をするだけでカラダが"こいつまた低酸素にいく気だな"と(笑)、今のうちに準備を始めておかないといけないだろうというようなことが起こると。準備=カラダを動かすというわけじゃなくて、頭の中で次の登山を思い描いて、いかに細部まで、そしていかに多重に多方向に想像できるかが私にとって最初の準備であり、最も重要な準備だと思っています。」

――登山はイメージすることが大事だと。

「スポーツにはイメージトレーニングという言葉があって、私もスキーをやっていたときはスタートからゴールまでキレイに滑れる様子を頭の中にイメージしてとよく言われたんですけど、登山の場合は成功するイメージよりも、"死ぬイメージ"をいかにできるかが重要。どんな失敗の仕方があるのだろうか、それをいかにたくさん想像できるのならば、どうしたら死なないようにすればいいのかを想像できる。失敗の想像を10できたならば、失敗しない方法も10考えられる。上手く行くことを、私たちははなから期待していなくて、必ず自分の想像を超える状況に出くわすだろうと。イメージというよりは"想像合戦"。自然は必ず自分の想像を上回ってくるので、想定外をいかに超えていけるかどうかが私にとっての山登りの面白さです。」

文/溝口元海

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【PROFILE】


竹内洋岳 HIROTAKA TAKEUCHI

1971年、東京生まれ。高校・大学時代に山岳部で登山の経験を積み、20歳で初めて8000メートル峰登山を成功させる。

2001年からは酸素やシェルパを使用せず、アルパインスタイルを積極的に取り入れた速攻登山で複数の8000m峰を継続する登山スタイルを採用。

2012年5月にはダウラギリへの登頂を果たし、日本人初の8000メートル峰全14座を達成。


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